はな4

それは昨年の10月30日の事です。いつものようにコロと朝の散歩に出て5分も歩いた頃、急にコロが歩道の植え込みにもたれるように倒れてしまいました。一体何が起きたのかとびっくりして抱き起こすと、今までに見たことも無いような早いまばたきをしています。普段、抱っこは嫌いなはずなのにグッタリして抱かれています。仕方なく、体重が11kg以上もあるコロを抱いたまま家へ帰りました。さあ、それからが大変でした。嘔吐はするし、呼吸も苦しそうにしています。普段お世話になっている愛犬病院に連れて行ったのですが「うちでは解らない」と言われ、どこかに良い病院はないかと尋ね歩きました。すると、同じ地区会員のKさんのお隣が愛犬を病気で亡くされたそうですが「良い先生を知っているらしい」とのことでした。
コロ1藁をも掴む思いで相談すると「紹介してあげる」と言って、たまたま来合わせた隣地区会員のTさん運転の車で、一緒に病院まで付いて行ってくれました。Kさんが普段からお隣と良いお付き合いをしてくれていたお陰で、願っても無いお手配を頂きました。有り難かったです。
犬は少しくらい具合が悪くても、人間のように「お腹が痛い」「頭が痛い」とは言ってくれません。その動物病院は車で20分程の所にあり、何人かの若い先生と看護師が居て、皆さん優しい人ばかりでした。とりわけ、院長先生が人当たりの良い人で、コロにも優しく接してくれます。触診と頭部のレントゲン写真を見て、生命維持に不可欠な「脳幹」が障害されて発症する「中枢性前庭疾患」であることが解りました。早いまばたきは、めまいが起きているからで、だから立っていられなかったのです。院長先生から「この1週間がヤマです。それで回復しなければ、諦めて下さい」と言われました。ステロイドや抗生物質など3本の注射、その上何も食べないので点滴をしてもらいに、悲痛な思いで毎日通いました。点滴は皮下にするので、終わるとお腹がブヨブヨになります。
1週間が過ぎ、その間コロは頑張りました。フラフラながらも立てるようになり、何とか食欲が出てきました。更に1週間、先生は「食事が出来るようになったのなら毎日通うのは大変でしょうから、錠剤の飲み薬にしましょう」と言ってくれるまでになりました。これで一安心です。
コロ コロは主人の私より顔が広いので、多くの人に見舞ってもらいました。中には気持が塞いでいた私に「ワンちゃんのためにも元気を出して下さい」と気遣ってくれ、栄養ドリンクまで持って来てくれる人も居ました。薬の量を減らしながら更に1カ月が過ぎ、首が少し右下に曲がっているだけで通常の散歩が出来るまでに回復しました。「いつまた発症するか分からないので、充分注意して下さい」とのことで治療を終えました。
コロを散歩に連れて出ると、「元気になってよかった、よかった」と近所の人たちに喜んでもらえたのが、本当に嬉しかったです。

「かけた情けは水に流せ、受けた恩は石に刻め」という格言があります。人に助けられたり、してもらった事は時とともに忘れてしまいがちですが、してやった事はいつまでも覚えているのが凡夫の悲しさです。コロの病気を通して、多くのことを学びました。させてもらった事は忘れても、してもらったご恩は決して忘れてはならないのです。
今朝も梅雨の晴れ間を暑いあついと言いながら、元気なコロと1時間ほど散歩して来ました。                 -合掌- ≪老輩≫

橋1