世の中は決して極悪非道な鬼のような人ばかりではありません。慈悲深く、人情味に富んだ人も多いものです。ひどい仕打ちにあったとき、あるいは失敗して落ち込んだときに温かい手を差し伸べられると、「渡る世間に鬼はないな」と実感するものです。仏教語でいう世間とは、移り変わっていく世間一般のこと、つまり、世俗とか煩悩の迷いや苦しみの中にいることです。ここを離れることを出世間といい、出家の世界を意味します。迷いや苦しみの多い世間であるからこそ、在家信者である佼成会員は、そうした人々に温かい手を差しのべながら生きていきたいものです。
佼成出版社「The Yakushin」1993年2月号・暮らしの中の仏教より