今年の三月、支部長さんや部長さんと共にまだ雪深い開祖さまのご生誕地、新潟県菅沼を訪れ、そこでたくさんのことを学びました。その中のひとつとも言えますが、
春の田植えのときのことが強く印象に残りました。それはふもとの十日町の方で田植えをするときには、菅沼の人たちは山を降りてそちらに手伝いに行き、今度は逆に菅沼で田植えをするときには、町の人が山に上がってきてその手伝いをされたということです。これは別に菅沼のことだけではなく、当時の日本の社会のあり方として不思議でもなんでもないことだったのかもしれませんが、そこに大きな生活の知恵、日本の社会の素晴らしさというべきものがあるように思います。
今月の『佼成』会長先生ご法話では、私たちの生活のあり方を見直すキーポイントとして「少欲知足」と「もったいない」という言葉をお示しくださいました。戦後「消費は美徳」とばかり欲望をふくまらせて物質的繁栄を競ってまいりましたが、今さまざまな現象を通して日本人本来のあり方を見直していくべきときに来ているように思います。「少欲知足」とは「欲望に駆り立てられがちな心を自ら抑え、足るを知ること」。「もったいない」とは「生かされているお陰を知らず、もののいのちをムダにすることを戒める言葉」と会長先生はおっしゃっておられます。昔からあるこのような言葉の中にこそ、私たちの生きていく知恵があるのではないかと思います。
一年の半分近く雪でうずもれ、お互いに助け合って生きていくのが当たり前のような開祖さまの郷里菅沼での生活。当然物の命を大切にし、自分の分を守ると共に周りに人たちとの共存を図って生きていったことでしょう。そこに日本人としての原点のあることを省み、「少欲知足」「もったいない」という生き方に、今一度いのちを吹き込んでまいりましょう。
合掌